最近、福島原発事故を調べたことをきっかけに、放射線について以前より知識を得て、いろいろなことが気になりだしました。
航空業界で働く方の放射線量ってどのくらいなのかが気になったので調べてみました。
航空機内で浴びるのは自然放射線である宇宙放射線
放射線被曝の早見図(https://www.nirs.qst.go.jp/data/pdf/hayamizu/j/20180516.pdf)
によると、放射線は、 人工放射線(病院で受ける胃のバリウム(x線)検診など)と 自然放射線(宇宙、大地、食物など)があります。
航空機内で浴びる自然放射線である宇宙放射線は、二次宇宙線という放射線で、レントゲンをとるときに浴びる ガンマ線や、福島原発事故で放出された中性子線と同じです。
高度が高いほど、緯度が高いほど(北極と南極の磁極に近いほど)、浴びる二次宇宙線の放射線量が多くなるということです。
航空機の外壁には宇宙放射線を遮断する材質が使われていないようです。
鉛を使った材質にすれば、宇宙放射線を遮断できるそうですが、機材が重くなって、搭乗数と運賃に影響がでるため、どのメーカーも対応していないそうです。
パイロットとCAの宇宙放射線の年間被ばく量はどのくらい?
乗務員の被曝について、日本では過去、日本航空のニューヨーク便などで実際に測定したそうです。
それによると、往復26時間のフライトで、被曝量は 約92マイクロシーベルトだったそうです。
1シーベルト=1000ミリシーベルト=1000000マイクロシーベルトなので、想像と違い、かなり少ない被ばく量です。
文部科学省が事務局を務める放射線安全規制検討会が、2004年6月23日に、「飛行時間900時間で6ミリシーベルトの被曝」「同200時間で1ミリシーベルト」という発表を行ったそうです。
乗務員の勤務時間は年間800時間ほどだそうですので、最低でも年間に 約4ミリシーベルトという値になりますね。
これは、 1回の胃のバリウム検査で受ける放射線量と同じで、その程度の数値なのです。
年間100ミリシーベルトになると、発がんリスクが被ばく量に応じて増えるということです(放射線被曝の早見図 https://www.nirs.qst.go.jp/data/pdf/hayamizu/j/20180516.pdf)。
この100ミリシーベルトに対して、短時間で100ミリシーベルトを浴びるのと、1年間かけて100ミリシーベルトを浴びるのとでは影響が全く違うとされています。
短時間で浴びるとリスクが高まるとされているのです。
とうことは、 乗務員が1年間で浴びる4ミリシーベルトより、1回の胃のバリウム検査で放射線を浴びる4ミリシーベルトの方が危険だということになります。
乗務員の被ばく量は全く気にしなくてよくて、放射線によってさまざまな検査をする、医療被曝の方を気にするべきだということになります。
ただし、乗務員の方も同様に毎年検査を受けているなら(おそらく受けていると思いますが)、一般人よりも被ばく量は大きくなりますね。
でも、年間100ミリシーベルトになって初めて発がんリスクが生じるということを信じると、全く問題はないことになります。
ここで気になるのが、被ばく量の蓄積です。
さまざまなサイトをみると、放射線は体内に残らないということが書いてあります。
私もそう思っていたので、病院で検査を受けまくっても、放射線量が少ないから医療被曝しても大丈夫だと思っていました。
でも、実は違っていて、蓄積するとしたら・・・・・??
毎年の健康診断を受けて、なおかつ乗務歴が長い乗務員ほど、がんになる確率は確実に高くなるはずです。
1966年から2005年までの医学論文を調べ,1万5千人以上の女性のCAさんの発がんについて調べた研究があります.
これによると,CAさんの乳がん,白血病,脳腫瘍の発生率は一般の人と変わらなかったそうですが,唯一皮膚がんである悪性黒色腫は有意に多かったと報告されており,同じ結果が男性のパイロットでもみられています1,2).
さらに,ノルウェーでパイロット,またはCAさんへの宇宙線の影響を調べるために,2,000人以上のCAさんの妊娠・出産について調べられていますが,妊娠・出産の1年前まで乗務をしていても出産,胎児や新生児へのリスクは増加しなかったそうです3).
悪性黒色腫など皮膚がんがCAさんやパイロットに多いのは,彼らは休暇にビーチで日光を浴びることが多いからと説明されていますが,一方で,日本人のCAさんやパイロットには一人も悪性黒色腫の死亡例は報告されていないため,人種による差も大きいと思われます4).
また,一般の人と比べてCAさんは未産婦が多いなど生殖や生活に関する背景に差があったりするため,一般人と比較して結論付けることは簡単ではないという考察がなされています.
(レジデントノート 第16回 CAさんには乳がんが多い? 2016年1月号 https://www.yodosha.co.jp/rnote/trivia/trivia_9784758115629.html)
2018年のAFPに、米国を拠点として勤務する客室乗務員5366人を調査した記事がでていました。
乳がん有病率では、一般の人の約2.3%に比べ、女性乗務員では同3.4%だった。
また、子宮がんでは乗務員の0.15%に対し、一般の人が0.13%。
子宮頸がんでは乗務員1.0%に対し、一般の人が0.7%
。胃や大腸などの消化管がんでは乗務員0.47%に対し、一般の人が0.27%。
甲状腺がんでは乗務員0.67%に対し、一般の人が0.56%だった。乳がんリスクは、出産未経験の女性と3人以上出産した女性で高かった。出産未経験はリスク因子の一つとして知られていると、モルドコビチ氏は指摘した。
男性乗務員については、皮膚がんの有病率が高いことが判明した。男性乗務員のメラノーマとメラノーマ以外の皮膚がんがそれぞれ1.2%と3.2%だったのに対し、成人人口全体では0.69%と2.9%となっている。
この傾向が特に強かったのは、米国で航空機での喫煙が禁止となった1998年以前から勤務している場合だった。
航空機搭乗員は、がんの発生に関わると推定される既知の要因(発がん要因)に日常的にさらされている。発がん要因としては、宇宙放射線、体内時計(概日リズム)の乱れ、汚染化学物質などが挙げられている。
今回の調査に参加した客室乗務員は80%以上が女性。平均年齢は51歳で平均の勤続年数は20年強だった。
(参考:AFP 民間機乗務員のがん発生率、一般平均より高い傾向 米研究 2018年6月27日 https://www.afpbb.com/articles/-/3180146)
東京エクスプレスという記事(パイロットの放射線被ばく問題、浮上。NASA(米航空宇宙局)回避策提案 2013.11.07 http://tokyoexpress.info/2013/11/07/)では、
白人パイロットだと飛行時間が5,000時間を超えると白血病の発症との因果関係がみられるという。皮膚がんに罹患する頻度が高いとも言われる。
と書いてあります。
一番最初の引用記事ではあいまいですが、それ以外の引用記事は、放射線は蓄積するんじゃ?と考えてしまいます。
宇宙放射線以外の、体内時計(概日リズム)の乱れと汚染化学物質の影響が大きいからだ、と考えることもできますが。
国際的に共通の知見が示されていないので、結論づけはできませんが、やはり、放射線の蓄積はあるのではないかと私は考えます。
パイロット、CAの方は一般の方に比べてがんになりやすいのではないでしょうか。
特に参考にした記事:
(ビジネスジャーナル 航空機のパイロットやCA、がんを発症する人が多い?多量の放射線を被曝 2018.12.16 htt
ps://biz-journal.jp/2018/12/post_25921_3.html)
(パイロットと放射線被曝【華やかな世界の裏で、宇宙線やガンとの戦い】2020.2.22 https://www.hikouki-pilot.com/pilots-and-cosmic-rays/)